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弦の場の理論

超弦理論では任意の数の有限個の弦の相互作用を扱うことができますが、その計算方法は大変で場の理論のように無限個の弦の生成消滅や相互作用を包括的に扱うことはできません。このように包括的に場の理論を考えることのメリットは、超弦理論の非摂動論的な現象、即ちD-braneなどのソリトン(無限個の弦から構成されています)の生成消滅などを扱える点にあります。

では弦の場の理論をどのように考えるのでしょうか?今は開弦の理論を考えることにします。複数の弦の時間方向への伝播とその相互作用を考えると弦の一次元に時間発展の一次元が加わって二次元の曲面を考えることになります。この二次元の曲面は見方によるとリボン状の板とそのリボンが3つが集まっている場所(vertexといいます)に分解することができます。こうした見方をすることによって弦の場の理論は模式的にですが、簡単に式に書き下すことができるようになります。

しかし、理論を式に書き下すことができたからといってそれで計算をすることができる訳ではありません。ここでlevel truncationというテクニックを用いてようやく計算することができるようになります。level truncationとは弦の高次の振動を無視すること、すなわち弦があまり激しく震えることがないと仮定することで実行されます。このような仮定をすることは正しいのでしょうか?おおざっぱにいうと、弦が激しく震えるには高いエネルギーが必要なので、それだけのエネルギーを必要とする現象はめったに起きません、したがってlevel truncationはそれなりに納得のいく仮定だということが分かります。

いままで説明した弦の場の理論はWitten型のcubic型弦の場の理論と呼ばれるものです。弦の場の理論には他にも閉弦の場の理論やboundary型弦の場の理論などがあります。それについては、また追々説明していこうかと思います。